
人手不足の書店を24時間営業へ|無人化で売上を伸ばした「ほんたす」導入事例
2026年06月12日 11:04
開けたくても、開けられない
人手不足・人件費・営業時間の制約で「開けたいのに開けられない」店舗が増えています。
「もう少し営業時間を延ばせれば、取りこぼしている売上があるはずだ」
——小売店を運営する方なら、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。
しかし現実には、スタッフの採用が思うように進まず、人件費の負担も年々重くなっています。営業時間を延ばそうにも、その分だけ人を確保しなければならず、踏み出せない。閉店後の時間帯に来店ニーズがあると分かっていても、機会損失を見送らざるを得ない。こうした悩みは、多くの店舗経営者・運営責任者に共通するものです。
本記事では、この課題に対する一つの解決策として、実際に4時間の時間延長からさらに24時間営業へと段階的に踏み出した「あゆみBOOKS杉並店 supported by ほんたす」の事例をご紹介します。
なぜ営業時間の延長は難しいのか
営業時間を延ばすほど、人件費・採用・シフト管理の負担が比例して増える構造があります。
営業時間の延長が簡単に進まないのには、いくつかの構造的な理由があります。
第一に、営業時間と人件費が直結している点です。従来の店舗運営では、開けている時間にはスタッフを配置するのが前提です。そのため時間を延ばせば、その分の人件費がそのまま乗ってきます。
第二に、深夜・早朝帯の採用難です。人手不足が続くなかで、特に夜間や早朝に働ける人材の確保は容易ではありません。シフトを組むこと自体が負担になっているケースも少なくありません。
第三に、延長した時間に見合う売上が立つかが読みにくい点です。深夜・早朝は来店者数が少なくなりがちで、「人を置いても採算が合うのか」という不安がつきまといます。
つまり、営業時間の延長は「人を増やす前提」で考えると、コストばかりが先に見えてしまい、踏み出しにくいのです。
解決策としての無人化・省力化
人を増やさずに営業時間を延ばす方法として、無人化・省人化という選択肢があります。
ここで一般論として注目されているのが、店舗の無人化・省人化です。
営業時間の延長分をスタッフ配置ではなく、システムでカバーするという考え方です。
具体的には、会員認証や顔認証による入店管理、キャッシュレス決済、遠隔での見守りといった仕組みを組み合わせることで、スタッフが常駐しない時間帯でも店舗を開けておくことが可能になります。これにより、人件費を増やさずに営業時間を延ばし、これまで取りこぼしていた時間帯の来店ニーズに応えられるようになります。
一方で、無人化には留意すべき点もあります。
防犯・セキュリティの確保、お客様への「営業している」という認知づくり、そして無人時間に設備(照明・空調など)
をどう制御するかといった運用面です。これらをどう設計するかが、無人化を成功させる鍵になります。
導入事例:あゆみBOOKS杉並店 supported by ほんたす
4時間延長から24時間営業へ段階的に拡大し、24時間営業トライアル期間(2025年11月〜2026年1月)の無人営業時間の積上効果は平均+9.8%を記録しました。
段階的に踏み出した3つのステップ
東京都杉並区にある「あゆみBOOKS杉並店 supported by ほんたす」は、いきなり24時間営業に踏み切ったわけではありません。次のように段階を踏んでいます。
2024年9月:ほんたす導入・4時間延長
朝8時〜10時と夜22時〜24時を無人営業、日中10時〜22時を有人営業とするハイブリッド型でスタート。合計4時間の営業時間延長を実現しました。
2025年11月1日:24時間営業トライアル開始
無人営業開始から約1年が経過し、お客様にも無人営業が浸透したことを受けて、これまで閉店していた0時〜8時にも無人営業を拡大。トライアルを開始しました。
2026年2月1日:正式に24時間営業へ移行
約2ヵ月間の検証で一定の効果が得られたことから、正式に24時間営業へ移行しました。2026年3月時点の無人営業時間は22:00〜翌8:00です。
データで見る効果:無人営業時間の積上効果
今回は「積上効果」という指標を用います。これは、有人営業時間の売上に対して、無人営業時間の売上がどれだけ上乗せされたかを示すもの(無人営業時間売上 ÷ 有人営業時間売上)です。
24時間営業時の積上効果は、平均で+9.8%、最大で+10.0%。4時間延長時と比べると、平均値で+4.3ポイントの上積みとなりました。有人営業時間の売上を基準に、無人営業時間がそれだけ売上を積み上げたことになります。
入店客数の傾向:延長時間帯だけでなく全体で増加
延長した無人営業時間(0時〜8時)のうち、特に0時〜2時に来店が集中し、延長した無人営業時間の入店客数の半分以上を占めました。一方で、深夜から早朝にかけての2時〜8時の来店者数は少ない傾向でしたが、一定数の入店がありました。
興味深いのは、もともと無人営業していた朝・夜の時間帯でも入店客数が増えた点です。
朝8時〜9時は約18%、夜23時〜24時は約25%ほど増加しました。これは、24時間営業化によって「いつ行っても営業している」という認知が広がった影響と考えられています。
コスト面:増えた売上が光熱費の増額分を上回る
24時間営業化では、延長した分の水道光熱費が増加します。あゆみBOOKS杉並店では、節電施策を進めたこともあり、光熱費の増額幅は10〜30%となっています(暖房・冷房使用時は費用が高くなります)。
ポイントは、24時間営業化によって新たに獲得した売上・粗利が、この光熱費の増額分を上回っている点です。結果として、店舗の利益に貢献しているという実績が出ています。
なお、設備制御や水道光熱費は店舗の設備・規模・従来の営業時間によって変動します。実際に延長を検討する際は、ケースごとに事前にどれだけ費用が増えるかを確認が必要です。
まとめ:段階的に始めて、データで判断する
あゆみBOOKS杉並店は「4時間延長 → 24時間営業トライアル → 本格移行」と段階を踏み、データで効果を確認しながら踏み出しました。
人手不足・人件費・営業時間という課題に対して、無人化・省人化は「人を増やさずに営業時間を延ばす」という現実的な選択肢になり得ます。
あゆみBOOKS杉並店の事例で示されたのは、いきなり大きく変えるのではなく、まず無理のない範囲で延長し、効果を確認しながら段階的に拡大していくという進め方でした。実際に、24時間営業トライアル期間の無人営業時間の積上効果は平均+9.8%、増えた売上は光熱費の増額分を上回る結果となっています。
自店の規模や営業時間、設備に合わせてどんな形が最適か——まずは現状の費用と見込める効果を試算してみることが、検討の第一歩になります。